人成長ホルモンは細胞や皮膚、骨、筋肉等人体の殆ど全ての成長と代謝に作用して機能を調節する役目をつかさどり、生きていく上で必要不可欠なホルモンですが、思春期をピークに20代後半から急激に減少する事が知られています。老化現象の主原因の一つとされていますが、近年の研究では減少して行く成長ホルモンを活性化する物資があることが分かってきました。これを成長因子(グロースファクター)、或は増殖因子や細胞増殖因子と呼んでおり、関連類似因子を含めて十数種類の内因性物質の存在も判明しています。
各成長因子の働きは身体の部位の細胞の種類により異なっており、総じて特定の細胞の増殖や分化、所謂細胞成長を促進する内因性の蛋白質であると定義づけられ、これら成長因子の幾つかは育毛や発毛に効果があるとされており、特にIGF-Iはイソフラボンとカプサイシンとの組み合わせでより活性化され、これらと併せてIGF-Iを使用することで育毛や発毛促進を促すAGA治療が俄に注目を浴びています。
IGF-Iとは日本語ではインスリン様成長因子の一種で、他にIGF-IIがありますが、共にインスリンと配列が高度に類似したポリペプチドであるところからこう名づけられ、IGF-IIは初期の発生、つまり主に胎児期に要求される成長因子であり、脳・すい臓・筋肉・腎臓から分泌されています。又、IGF-I後の段階、つまり胎児期後の発達清長期に於いて重要な働きを担い、肝臓で成長ホルモンによる刺激の結果分泌されます。AGA治療においてはIGF-Iの細胞の加齢抑制効果に着目し応用しようとしたものであり、日本の研究者がイソフラボンとカプサイシンの知覚神経刺激効果によりIGF-Iを増加させ、結果として育毛や発毛に効果をもたらす事に成功した事で実用化に動き出しています。
IGF-I自体には発毛効果はありませんが、その働きは老化の抑制と細胞の成長を助けるものであり、もともと体内に存在するIGF-Iを増殖させる事ができれば、他の薬剤で薄毛の進行を抑制し、発毛効果のある薬剤で発毛を促しより丈夫な毛髪発生効果が期待できるのがAGA治療法と言え、更に当該治療法には普段の食事や生活習慣の改善と習慣化も重要な位置を占めると言われています。大豆・豆腐・玄米・鮭・海藻類・緑茶・卵黄等の和食をバランスよく摂取することで、つやのある毛髪と健康な頭皮の維持に努め、飲酒を控える事でIGF-I分泌をつかさどる肝臓の健康状態を維持する必要が訴えられ、喫煙はストレスをため細胞を傷つけると指摘されており控えるべきとされています。その他規則正しい生活、食べ過ぎや早食い、塩分や糖分の摂取過多、適度な運動、冷え、適度な日光浴等に注意することも重要視されています。
従来の治療法と比較すると画期的とも言えるIGF-Iを使ったAGA治療法ですが、実用化されてまだ間もない事も事実であり、IGA-Iについてもまだ良く分かっておらず、IGFは確かに体内に存在する成長因子ではありますが、治療に使用されるIGFが人由来であるのかどうか、人や他の動物の如何に関わらず長期間に亘っての投与が人体にどのような影響を及ぼすのか、長期間の投与がIGF受容体にどのような影響を及ぼすのか等解決すべき課題は重要な点が多く、それだけに今後の研究への期待は高まるばかりです。加えてIGFを使用した治療を含むAGA治療全般は自由診療領域となり、治療費は高額であり全て自己責任となります。何れにしてもIGF-Iを使用したAGA治療は発展途上の治療法であり、当該治療を望まれる方はその点十分に理解した上で加療を受ける必要があります。